会長挨拶


     学知の継承に向けて  地域漁業学会会長  田和 正孝

 ここ数年、学会への参加がままならず、最新の情報を会員の皆様と共有せぬまま会長に選任いただきましたこと、申し訳なく、また身の引き締まる思いで受け止めております。皆様のお力をお借りしながら、仕事を全うできるよう努力をいたしますので、何卒よろしくお願い申し上げます。

 思えば、前身の西日本漁業経済学会から地域漁業学会へと名称変更してからすでに20年以上が経過しました。「地域性」「国際性」「学際性」という学会の理念が定着し、それが大会での発表、各種のシンポジウムや交流集会、部会活動に引き継がれてきていることは周知の事実です。鹿児島大学にて開催された第55回大会を振り返ってみても、枕崎の鰹節産業の過去・現在・未来を取りあげたシンポジウム、漁業経済学はもとより、地域研究、人類学、地理学など専門が異なる研究者が発展途上国から先進国まで様々なフィールドを対象に調査・研究した個別報告から、本学会の理念を大いに感じることができました。

 私の第一の目標は、こうした理念に基づいて本学会がこれまで築きあげてきた財産を維持し、これらをさらに蓄えてゆく道を探ることです。1976年に本学会に入会した自身にとっては、それなりに学会の歴史を見通せるという自負もあります。その中で大切なことのひとつが、スムーズな世代交代や学知の継承であると考えます。地域という名称を戴くことによって、学際性は確かに大きな広がりを持ちました。若手の研究者にも広い門戸が開かれました。しかし、こうした若手研究者が、学問の壁を越えて情報を交換し、ともに調査地に赴いて議論するといった活動を果たしてなし得てきたでしょうか。きわめて大きな成果を生んだ事例が数多くあります。他方で、若手研究者が本学会を研究発表の場として一時的に利用するだけに終わったり、彼/彼女たちの学会活動が数年間しか続かなかったりしたことを何度も見てきました。この責任を本人たちにだけに帰するわけにはいきません。私たちは、いかにして後継の人たちに研究の場を与えてゆけばよいのか、真剣に考える時期であるとの認識にたって、会長の仕事をスタートしたいと考えます。

 具体的には、様々なバックグラウンドを持ちながら集った若手研究者に、本学会に対する期待を語ってもらう集会や、シニアの研究者が自らの研究歴や自分史を語るシンポジウムも催したいと考えています。このような計画に対して皆様から建設的なご意見をお寄せいただければ幸いです。

 学会運営につきましては、会員の皆様はもとより事務局の方々のお力なくしては成り立ちません。どうかよろしくご協力くださいますよう重ねてお願い申し上げ、ご挨拶とさせていただきます。