学会賞

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★ 学会賞推薦書の書式(word)

2024

 2024年の地域漁業学会(東京海洋大学)において、以下の通り、学会奨励賞(中楯賞)・学会功労賞(柿本賞)の受賞が決まりました。なお、学会賞は該当がありませんでした。

 奨励賞(中楯賞)崎田 誠志郎 会員
 功労賞(柿本賞)山尾 政博 会員

2021

 2021年の地域漁業学会(金沢大学)において、以下の通り、学会賞・学会奨励賞(中楯賞)の受賞が決まりました。なお、学会功労賞(柿本賞)は該当がありませんでした。

<地域漁業学会賞>
河原 典史 会員

『カナダにおける日本人水産移民の歴史地理学研究』古今書院
2021年3月刊 ISBN 978-4-7722-3196-1
 本書は、第二次世界大戦前にカナダ西海岸への水産移民として太平洋を渡った日本人の時間的・空間的移動の足跡を、歴史地理学的な視点から丹念に検討した労作である。
 著者の河原典史氏は、これまで日本国内外における漁業者の移動について、調査研究を精力的に続けてきた。2001年には立命館大学よりバンクーバーのブリティッシュ・コロンビア大学日本研究所客員研究員として赴き、漁業移住した和歌山県出身者に焦点を当てた数々の調査研究を進めてきた。本書はその成果として発表した既往の諸論文に加えて、新たに書き下ろした論文をもとに構成されたものである。
 従前の日本人の移民研究に関しては、著者が語るように、漁業にかかわる移民の研究が等閑視されてきた。議論の対象とされてきたのは、もっぱらハワイ・アメリカ合衆国・ブラジルなどへ渡った農業移民についての研究であった。こうした理由について著者は、農業移民の場合には移住、定着、同化を通じて都市住民として展開する事象が検討の対象としやすかったことに対して、漁業移民については渡航後も移動性が高いこと、海上での漁業活動を検討する必要があること、漁獲物の流通・加工・保存にかかわる分業体制や漁具・漁船の製造販売を視野に入れる必要があることなどから、研究自体を困難なものとしてきたと指摘している。
 以上のような課題をふまえて、本書は、漁業のみならずその関連産業を含めた「水産」という視座から日本人移民の問題に果敢に考究している。具体的には、サケ缶詰産業をめぐる事例や、イギリス系カナダ人の経営する捕鯨業に雇用される事例、独占的に従事した塩ニシン製造業の事例を取りあげる。さらにバンクーバー島における日本人による漁村開拓の分析なども行っている。
 以上のような諸テーマにアプローチするに際して、著者は水産移民の輩出地を「集落・イエ・ヒト」といったミクロな空間スケールから分析すべく、地籍図や土地台帳といった地理学では必須の資料を用いて実証するだけでなく、受容地の検討に際しては、『在加奈陀邦人々名録』といった住所氏名録、日本語新聞の『大陸日報』、Fire Insurance Plan(火災保険図)、BCDirectory(ブリティッシュ・コロンビア州住所氏名録)、古写真などの多岐にわたる資料を活用し、その様相を明らかにしている。さらに注目すべきは、地理学ではこれまでその活用に慎重であったライフヒストリー論の検討をおこなった点である。その検討を通じて、著者はカナダへの日本人移民が血縁・地縁に基づく連鎖移住による自由移民であることを明らかにした。移動性の高い漁業者を取りあげる際には、出身地といった属性、漁業技術など、個人レベルでの分析がぜひとも必要であり、そのためライフヒストリーの検討はきわめて有効である点も指摘している。
  河原典史氏による著作には、カナダへの日本人移民について、「水産」という視座から、地理学的手法を着実に踏まえるとともに、ライフヒストリーの検討など、斬新な視点を取り入れて考察している諸点に、研究の独自性が大いに認められる。以上のことから、河原氏を地域漁業学会賞受賞者として推薦するものである。

<地域漁業学会奨励賞(中楯賞)>

原田 幸子 会員
 原田幸子氏の本学会における近年の活躍は顕著である。研究内容は、地域産地における水産加工業と流通形態、魚食文化と水産物輸出に関する考察、地域ブランドの創出と地域活性化、漁業協業化に関わる課題の分析など多岐にわたっている。地域漁業研究誌に掲載された近年の論文は共編5本(うち3本は筆頭著者)に及んでいる。今後の活躍も大いに期待される。本委員会は原田幸子氏を地域漁業学会奨励賞(中楯賞)の授与にふさわしい会員としてここに推薦する。

天野 通子 会員
 天野通子氏は、本学会における近年の活躍は顕著であり、研究内容も、大学教育における漁業・漁村研究のあり方と人材育成、魚食普及、東北・北海道におけるサケ・マスふ化事業の構造とその変化、タイのエビ養殖産地におけるGAP(Good Agricultural Practices)制度の発展など多岐にわたっている。地域漁業研究誌に掲載された近年の掲載論文は共著論文6編(うち筆頭著者の論文は1編)にのぼる。今後の活躍も大いに期待されるところである。天野通子氏を、地域漁業学会奨励賞(中楯賞)を授与するにふさわしい会員として、ここに推薦する。

2020

 2020年の地域漁業学会において、以下のとおり、柿本賞の受賞が決まりました。なお、学会賞、中楯賞は該当がありませんでした。

<地域漁業学会功労賞(柿本賞)>
片岡千賀之 会員

受賞理由:(詳細は会報112号に掲載)
 片岡会員の地域漁業学会での活動は長きにわたっており、本会の前身である西日本漁業経済学会が設立して15年を迎えた1970年代中盤から始まっている。すでに50年近い学会活動を通じて、20本におよぶ論文を本学会誌に発表されてきた。その内容は、イワシ網、まき網漁業の経営分析や戦前期の奄美・沖縄、東南アジアの漁業史的研究、新たな漁業管理に関する理論的研究など多岐にわたっている。1990年代から2000年代にかけては、本会が主催した日韓共同シンポジウムや、大会のシンポジウムにおいてコーディネータとしても活躍されてきた。2011年には、一連の「地域漁業の近現代史の研究」(主著『近代における地域漁業の形成と展開』2010年、九州大学出版会ほか)に対して地域漁業学会学会賞が授与されている。
 大会には毎年のように参加され、学会活動を担われた。大会報告でのソフトな語り口のお話しぶりは聴衆を魅了したし、若手研究者の報告に対しては、時に厳しい質問を投げかけつつ、後進の指導に熱い思いを託された。本学会会長を務められ、本会の発展にも大きく寄与されたことは会員の喜びである。2019年11月に長崎大学を会場として開催された第61回大会にも出席され、会員に近著『イワシと愛知の水産史』(2019年、北斗書房)をご披露くださった。
 以上、片岡千賀之会員の地域漁業学会に対する長きにわたる貢献と功労に対して、2020年度地域漁業学会功労賞(柿本賞)受賞にふさわしく、ここに推薦申し上げます。

2019

 2019年の地域漁業学会(長崎大会)において、以下のとおり、学会賞の受賞が決まりました。なお、中楯賞、柿本賞は該当がありませんでした。

<地域漁業学会賞>
増﨑 勝敏 会員

『現代漁業民俗論』 筑波書房
2019年8月刊 ISBN978-4-8119-0559-4
 本書は、著者の過去30年あまりにわたる地域漁業に関する民俗学的研究の成果をまとめたものである。全13章からなる内容には、関連するこれまでの研究を回顧したうえで、大阪湾沿岸地域、高知県中土佐町久礼、福岡県志賀島など西日本各地における継続的な民俗学的調査の成果を問うている。方法としては、聞き取り調査だけではなく、社会学や地理学の調査手法を十分に理解したうえで、乗船調査による参与観察、仕切書や船員手帳など分析などを試みている。
 日本民俗学が対象としてきた「伝統的」な漁業への追究だけにとどまることなく、「現代的」漁業を視野に入れ、そこに見られる諸課題を考察している点を高く評価できる。漁業民俗学の専門書としてだけでなく、漁業に関心をもつ多くの読者に読まれることを大いに期待させる力作である。

2017

 2017年の地域漁業学会(東京大会)において、学会賞、中楯賞、柿本賞は該当がありませんでした。

2016

 2016年の地域漁業学会(大分大会)において、以下のとおり、学会賞の受賞が決まりました。なお、中楯賞、柿本賞は該当がありませんでした。

<地域漁業学会賞>

林紀代美(金沢大学)
『魚食と日本人 ~水産と人・生活・地域のかかわり~』 古今書院
2015年12月刊 ISBN 978-4-7722-3174-9

北窓 時男
『海民の社会生態誌―西アフリカの海に生きる人びとの生活戦略』 コモンズ、
2013年7月刊 ISBN978-4-86187-104-7

2015

 2015年の地域漁業学会(広島大会)において、以下のとおり、中楯賞、および学会賞の受賞が決まりました。なお、柿本賞は該当がありませんでした。

<地域漁業学会賞>

小川 真和子 会員

<地域漁業学会奨励賞(中楯賞)>
佐々木 貴文 会員

2014

 2014年の地域漁業学会(三重大会)においては、中楯賞、柿本賞、および学会賞の受賞はありませんでした。

2013

 2013年の地域漁業学会(鹿児島大会)において、以下のとおり、中楯賞、柿本賞、および学会賞の受賞が決まりました。

<地域漁業学会賞>
東村 玲子 会員
 『ズワイガニの漁業管理と世界市場』成山堂書店,2013

<地域漁業学会功労賞(柿本賞)>
小野 征一郎 会員

<地域漁業学会奨励賞(中楯賞)>
玉置 泰司 会員
「水産業・漁村の多面的機能と政策形成の特徴に関する一連の研究」

鹿熊 信一郎 会員
「沿岸域における水産資源管理に関する研究」

2012

 2012年の地域漁業学会(京都大会)において、以下のとおり、中楯賞の受賞が決まりました。なお、学会賞と柿本賞は該当がありませんでした。

<地域漁業学会奨励賞(中楯賞)>
河原 典史 会員(立命館大学)
「水産移民に関する歴史地理研究」
 このたび地域漁業学会奨励賞をいただき、誠にありがとうございます。  受賞の場に、修士論文での調査以来お世話になっている福井県美浜町の方々が、ミニシンポの登壇者として同席されていたことも、何かのご縁と思います。そして、柿本典昭先生には、天国に向かって今回の受賞のご報告とお礼を申し上げます。私を水産移民の歴史地理研究に導いてくださったのは、大学院博士課程在学時に対馬の日韓合同調査に参加を勧めていただいた柿本先生にほかありません。それを契機に、瀬戸内海から対馬、さらに韓国済州島へと移動する水産移民について本格的に調査を開始しました。やがて、それはカナダでの日本人水産史の研究へ展開するようになったのです。今回の受賞を励みに、そして甘えることなく、今後とも研鑽を重ねて参ります。本当に、ありがとうございました。

増﨑 勝敏 会員(大阪府立旭高等学校)
「漁撈民俗学に関する実証研究」
 私はこれまで、高等学校の教壇に立ちながら、漁撈民俗学の研究に携わって参りました。「野にある者」として本賞を頂戴し、光栄に存じます。有り難うございました。  「なぜ漁業の研究を?」と尋ねられます。自分でもうまく答えられませんでした。しかし、高知のある漁村で、家族の心配をよそに嬉々として船を運ぶ老漁師の姿を見て、彼をオキへとつき動かしている何かに、私の学問の根底があるのだと感じました。  民俗学で漁撈を手がける研究者は多くありません。それゆえに、この分野での研究に微力ながら貢献すべく励んでゆきたいと思います。

2011

 2011年の地域漁業学会(鹿児島大会)において、以下のとおり、学会賞および中楯賞の受賞が決まりました。なお、柿本賞は該当がありませんでした。

<地域漁業学会学会賞>
片岡千賀之 会員
「地域漁業の近現代史の研究」
 学会賞、ありがとうございました。  今後も、各地域漁業の盛衰を長期的スパンで取りまとめていきたいと思います。近年の漁業は衰退縮小していることが多く、憂鬱になりますが、再生の手がかりは歴史のなかにあるという気持ちで臨みたいと思います。

中村 周作 会員(宮崎大学)
「行商研究」
 学会賞、心よりお礼申し上げます。本書は、かつて漁村の基幹産業であった女性水産物行商の総括的研究を目的に書いたものです。ご指導いただいた大島襄二先生始め多くの先生方に深謝申し上げます。今は、酒と魚料理の文化地理と、またまた漁業の端っこの研究に精進しております。今後とも、何とぞよろしくお願い申し上げます。

<地域漁業学会奨励賞(中楯賞)>
久賀 みず保 会員(鹿児島大学)

「水産物の商品化技術に関する研究」
 養殖マダイ流通、カツオ節加工流通を材料にした論文をもとに、この度の評価を頂きました。これらの研究を通じて学んだことは、水産業も他産業同様、多様なマーケットを睨みながら柔軟に商品化を図ることが重要だという点です。そしてそれを実現するひとつが、流通局面における加工機能の添加あるいは更なる高次加工化でありましょう。強まりつつある簡便化志向を背景に、加工機能はますます重要になっています。急速に変化する末端需要との結びつきを意識しながら水産加工業の現状を評価し展望すること、これを当面の研究課題とし水産物需給の正しい理解に貢献していきたいと考えております。同時に、この度の受賞を励みに執筆量を増やし、洞察力、筆力を錬磨していきたいと思います。ありがとうございました。

2010

 2010年の地域漁業学会(愛媛大会)において、以下のとおり、中楯賞および柿本賞の受賞が決まりました。なお、学会賞は該当がありませんでした。

<地域漁業学会功労賞(柿本賞)>
古谷 和夫 会員

<地域漁業学会奨励賞(中楯賞)>
川辺 みどり 会員(東京海洋大学)
 1999年に多屋勝雄先生にご紹介いただき、地域漁業学会に入会いたしました。それまで研究といえば自然科学的アプローチしか知らなかった私には、沿岸地域について社会科学的にアプローチし、その情報と意見をわかちあう場である本学会はたいへん新鮮でした。それから10年余、現場と学会・研究会で多くの方々に支えられながら、沿岸資源環境の利用と保全について調査と報告を続けてこられたことを本当に幸せだと思っております。今回の受賞を「もっと真摯に研究しなさい」、という天の声と受け止め、精進したいと思います。ありがとうございました。

2009

 2009年の地域漁業学会(山口大会)において、以下のとおり、中楯賞および学会賞の受賞が決まりました。なお、柿本賞は該当がありませんでした。

<地域漁業学会賞>
市川 英雄 会員

『糸満漁業の展開構造-沖縄・奄美を中心として-』沖縄タイムス社,2009
15年前に書いた学位論文を刊行したものが、思いもかけず、学会賞をいただき、驚愕と同時に名誉に感じています。学位論文の作成過程及び本書の出版・刊行までに多くの方々のご協力やご助言をいただきましたことに、感謝しています。本研究成果が当該分野の研究発展にいささかでも役立てば望外の幸です。

酒井 亮介 会員
『雑喉場魚市場史』成山堂書店,2008

<地域漁業学会奨励賞(中楯賞)>
鳥居 享司 会員(鹿児島大学)

 学会を創設された中楯先生の名前の入った賞を,恩師である山尾先生より受けることができ感激しております。さて,鹿児島大学に着任して約3年たちました。学務に費やす時間が増し,研究の時間がやや減っている点に危機感を感じておりましたが,この受賞を励みに今後もコツコツと地道に正直に研究活動を続けていきたいと考えております。今後ともどうぞよろしくお願いいたします。

2008

 2008年の地域漁業学会(広島大会)において、以下のとおり、中楯賞の受賞が決まりました。受賞者からコメントをいただきましたので、ご紹介します。なお、学会賞と柿本賞は該当がありませんでした。

<〈地域漁業学会奨励賞(中楯賞)>
林 紀代美 会員(金沢大学)

 学会への単身乗り込みから早11年,学際的な環境のなかで多くの方々より温かいご指導を賜ってきたことが受賞につながりました,心より感謝申し上げます。 流通研究,教育場面づくりへの注目,(津波)災害・防災教育の活動…これらは素敵な仕事ですが,地理学分野でもマイナーな内容・活動です。今後も少しずつ精進し,自分らしい研究や役割の遂行に努める所存です。

松浦 勉 会員(中央水産研究所)
 中楯賞をいただきありがとうございます。35年前の長崎大学水産学部の学生の時、集中講義で中楯先生の講義を受けて大変感銘を受けましたが、あの当時も眉毛が印象的でした。私は研究を始めてから10年目であり、若手研究者として受賞でき大変幸せです。今後とも精進したいと思います。

2007

 2007年の地域漁業学会(宮崎大会)において、以下のとおり、中楯賞と柿本賞の受賞が決まりました。受賞者からコメントをいただきましたので、ご紹介します。なお、学会賞は該当がありませんでした。

<地域漁業学会奨励賞(中楯賞)>
遠藤 愛子 会員(広島大学大学院)

 海の博物館の石原館長の勧めで地域漁業学会長崎大会に初めて参加してから、あっという間に4年が過ぎました。今、思い返してみると、人のめぐりあわせの不思議さと、どれだけ多くの方々に助けられてきたのかと、改めて実感いたします。ここに紙面をお借りして皆様にお礼申し上げます。

東村 玲子 会員(福井県立大学)
 今回の受賞は、とても嬉しいものであると同時に、これまで指導を賜った先生方への感謝の気持ちで一杯です。私が海外調査に熱中するのは、自分の度胸と能力を試す良い機会だからでもありますが、カナダ大西洋岸の漁業は変革期にあり、その行方をこの目で見たいという強い思いもあります。今後とも精進したいと思います。

<地域漁業学会功労賞(柿本賞)>
米田 寛 会員(みなと新聞)
 柿本賞の受賞を喜ぶ:先の地域漁業学会宮崎大会で、思いもかけず第1回柿本賞を受賞いたしました。今は素直に受賞を喜んでいます。学会の開かれた宮崎公立大学は、小生が学生の時に一般教養の授業に通った思い出の場所であっただけに感慨深いものがありました。今後も健康に気をつけて学会発展のためがんばりたいと思います。

2006

 2006年の地域漁業学会学会賞は、選考委員会(片岡千賀之・長谷川健二・婁小波・若林良和・山尾政博・日高健・小野征一郎)における活発な議論のすえ、以下のように決定した。小浜大会に参加した会員はご承知の通りであるが、非参加の会員に周知することも含めて、学会賞選考運営委員長として選考結果・経緯等を報告しておこう。

<地域漁業学会賞>
加藤 辰夫 会員
 
『環日本海の漁業と地域産業-沖合底曳網漁業の経営と流通-』成山堂書店,2006
有路 昌彦 会員
『水産経済の定量分析-その理論と実践-』 成山堂書店,2006

<地域漁業学会奨励賞(中楯賞)>
山本 尚俊 会員
水産流通に関する一連の研究
中原 尚知 会員
マグロ漁業の経営分析および漁業の多面的機能に関する一連の研究
包 特力根白乙 会員
中国の水産物需要構造の計量経済的分析に関する一連の研究

 「地域漁業学会 学会賞選考規定」によれば、地域漁業学会賞は「当該分野における研究の発展に対し多大に貢献したと認められる完成度の高い優れたな研究業績」、地域漁業学会奨励賞は「若手研究者による研究業績の中で特に当該分野における研究の発展に対し貢献度が高く、将来における一層の発展と向上が期待できるもの」、と定められている。  学会賞2本・奨励賞3本のいずれも、選考委員または一般会員からの推薦によるが、「該当者なし」のこともあったことを思えば、今年は「大豊作」というべきであろう。  奨励賞は、山本氏が従来の卸売市場分析に加えて近年のマグロ流通研究に対して授与され、中原・包氏は特に説明は不要であろう。
 学会賞の加藤著書は、地域産業論とフードシステムという分析方法にたち、グローバルなフレームワークのもとで沖合底曳網の漁業経営を分析し、主たる漁獲物であるホタルイカ・ズワイガニ・スケトウダラの産地流通を究明した。また底曳網漁業の、日本海を中心とする産地ごとの多様性を検討する。産地分析=地域性をグローバル流通=国際性と関連づけ、200海里体制、TAC管理、生産物のブランド化に現代的考察を加えている。
 有路著書の主眼は、日本漁業のグローバル化において、重要な生産物であるサケ・マス、ズワイガニ、マグロ等の価格分析を定量的に行い、産地戦略の有効な手段を追求することにある。奨励賞の包氏とともに、計量経済分析を地域漁業に活用し、これまで水産経済研究に体系化されなかった定量分析の地位を明らかにしている。それは国際性・地域性のみならず、学際性にも途を開いた作品として評価できる。本年の学会賞・奨励賞は、量的のみならず内容的にも、地域漁業学会のレーゾン・デトールである「国際性・学際性・地域性」にふさわしく、地域漁業学会の先見性を物語っているといえよう。                                                               選考委員長 小野征一郎(近畿大学)

過去の受賞者

年次奨励賞(中楯賞)学会賞功労賞
(柿本賞)
1993(h.5) 婁 小波 ・田中 史朗    
1995(h.7) 張 瑛秀 ・磯部 作    
1996(h.8) 山尾 政博 ・黒沼 吉弘    
1998(h.10) 田和 正孝 ・上田 不二夫    
1999(h.11) 若林 良和 ・北窓 時男    
2000(h.12) 宗 政憲    
2001(h.13) 日高 健 ・佐久間 美明    
2002(h.14) 常 清秀 ・波積 真理 
・金 大永
   
2003(h.15) 竹ノ内 徳人 ・有路 昌彦 濱田 英嗣
・日高 健
 
2004(h.16) 辻 雅司 該当無し  
2005(h.17) 該当無し 該当無し  
2006(h.18) 山本 尚俊 中原 尚知 
包 特力根白乙
有路 昌彦 
・加藤 辰夫
 
2007(h.19) 東村 玲子 ・遠藤 愛子 該当無し 米田 寛
2008(h.20) 林 紀代美 ・松浦 勉 該当無し 該当無し
2009(h.21) 鳥居 享司 市川 英雄
・酒井 亮介
該当無し
2010(h.22) 川辺 みどり 該当無し 古谷 和夫
2011(h.23) 久賀 みず保 中村 周作
・片岡 千賀之
該当無し
2012(h.24) 河原 典史 ・増﨑 勝敏 該当無し 該当無し
2013(h.25) 玉置 泰司 ・鹿熊 信一郎 東村 玲子 小野 征一郎
2014(h.26) 該当無し 該当無し 該当無し
2015(h.27) 佐々木 貴文 小川 真和子 該当無し